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筋トレとお酒の関係 ― 飲むなら知りたい影響と付き合い方

「筋トレをしているなら、お酒はやめた方がいいですか?」。パーソナルセッションで、この質問を受けない月はありません。仕事の付き合いで飲む方、週末のビールが楽しみで頑張れている方、減量中に会食が続く方。事情は違っても、共通しているのは「せっかくのトレーニングが無駄になるのでは」という不安です。

先に結論をお伝えすると、お酒は筋肉にとってプラスには働きませんが、飲み方を設計すれば、身体づくりと両立させることは十分にできます。年間1,500本のセッションで初心者から競技者まで見てきた経験上、結果を出せなくなるのは「お酒を飲む人」ではなく、「量・タイミング・頻度を何も決めずに飲む人」です。

この記事では、アルコールが筋肉・ホルモン・睡眠・回復に与える影響、飲む量を測る「純アルコール量」という物差し、トレーニング日と飲む日の組み合わせ方、飲みながら身体を守る実践ルール、おつまみの選び方、そして減量期や大会前での考え方までをまとめます。「飲むか飲まないか」の二択ではなく、「どう飲むか」を決めるための材料にしてください。

屋外のテラス席でビールグラスを掲げて乾杯する人たち

お酒が筋肉に与える4つの影響

「アルコールは筋肉に悪い」とよく言われますが、何がどう悪いのかを知らないと、対策の立てようがありません。私がお客様に説明している影響は、次の4つです。

影響身体の中で起きることトレーニングへの意味
筋肉の修復が妨げられるトレーニング後に高まる筋たんぱく質の合成が、アルコールで抑えられる方向に働くトレーニング直後の飲酒は、その日の効果を目減りさせやすい
ホルモンの働きが乱れる筋肉の合成に関わるホルモンの分泌が下がり、ストレスホルモンは上がりやすい量が多いほど、翌日以降の回復が遅れやすい
睡眠の質が下がる寝つきはよくなるが、後半の眠りが浅くなり、夜中に目が覚めやすい筋肉がつくられる時間帯の質が落ち、翌日のパフォーマンスも低下する
水分と栄養が失われる利尿作用で水分が抜け、アルコールの分解にビタミンやミネラルが使われる脱水状態でのトレーニングは、筋力の発揮もケガのリスクも悪化する

私がもっとも重視しているのは、1つ目の「修復の妨げ」と3つ目の「睡眠の質」です。筋肉が実際につくられるのは、トレーニング後の食事と睡眠の時間です。そこにアルコールが入ると、刺激は与えたのに材料と時間が足りない状態になります。運動後の飲酒で筋肉の修復に関わる働きが大きく低下したと報告した研究もあります。

ただし、ここで強調しておきたいのは、これらの影響は「量」と「頻度」に強く左右されるということです。週に1回、ビール1杯を楽しむ方と、毎晩缶チューハイを3本空ける方では、身体に起きることがまるで違います。だからこそ、次の「量の物差し」が重要になります。

飲む量は「純アルコール量」で考える

「ビール2杯」「ワイン3杯」という数え方では、度数も量も違うため身体への影響が比べられません。お勧めは純アルコール量(g)で考える方法です。計算式はシンプルです。

純アルコール量(g)= 飲んだ量(ml)× アルコール度数(%)÷ 100 × 0.8

0.8はアルコールの比重です。たとえば5%のビール500mlなら、500 × 0.05 × 0.8 = 20g となります。主な飲み物の目安を表にまとめました。

飲み物度数の目安純アルコール量の目安
ビール中瓶・ロング缶 500ml5%約20g
缶チューハイ(ストロング系)350ml9%約25g
ハイボール(缶)350ml7%約20g
日本酒1合 180ml15%約22g
ワイングラス1杯 120ml12%約12g
焼酎(ロック)100ml25%約20g
ウイスキー(シングル)30ml40%約10g

厚生労働省の資料では、生活習慣病のリスクを高める飲酒量として、純アルコールで男性は1日40g以上、女性は1日20g以上が示されています。これは健康面の上限であって、「ここまでなら筋肉に影響がない」という数字ではありません。私が指導で使っている目安は、もう一段厳しく、飲む日は20g前後までです。ビールなら500mlを1本、ワインならグラス2杯弱。ストロング系の缶チューハイは1本で超えるため、身体づくり中の方にはお勧めしていません。

トレーニング日と飲む日の組み合わせ方

同じ量を飲むにしても、いつ飲むかで筋肉への影響は変わります。私が現場でお伝えしている原則は3つです。

原則1:トレーニング直後の飲酒は避ける

トレーニング後の数時間は、筋肉が修復と合成にもっとも積極的な時間帯です。ここにアルコールを入れるのがいちばんもったいない飲み方です。「ジム帰りに一杯」が習慣の方は、まずこれを見直してください。飲む日は間隔を最低3〜4時間空け、その間にたんぱく質を含む食事を済ませておきます。

原則2:飲む日は休養日か、軽い日に当てる

週の予定を組むとき、飲み会の日は休養日にするのが基本です。会食が平日に集中している方なら、トレーニングを会食のない曜日と週末に寄せる。これだけでお酒とトレーニングの衝突はかなり減ります。

原則3:翌日に高重量や限界セットを予定しない

飲んだ翌日は、水分不足と睡眠の質の低下で筋力も集中力も落ちています。この状態で高重量を扱うとフォームが崩れ、ケガのリスクが上がります。翌日は中程度の重量でフォームを確認する日か、有酸素運動やストレッチの日にしてください。

パターンおすすめ度理由
トレーニング直後に飲む×修復がもっとも活発な時間帯を妨げる
トレーニングから4時間以上空け、食事後に飲む影響は減るが、睡眠の質への影響は残る
休養日の夜に、食事と一緒に適量を飲むトレーニングとの衝突がなく、翌日の調整もしやすい
翌日が軽い日、または休養日になるように飲む翌日のパフォーマンス低下を織り込める

飲みながら身体を守る7つの実践ルール

「量」と「タイミング」が決まったら、あとは当日の行動です。私がお客様にお渡ししている7つのルールを、順番に挙げます。

  1. 飲む前にたんぱく質を入れておく ― 空腹で飲むとアルコールの吸収が速くなります。鶏肉・魚・卵・豆腐など、たんぱく質20g前後を含む食事を先に済ませてください。
  2. お酒と水を交互に飲む ― 1杯のお酒に対して同量の水を挟みます。脱水を防ぎ、飲むペースが落ちて総量も減ります。
  3. 純アルコール20gを目安に、最初に本数を決める ― 席に着く前に「今日はビール1本とハイボール1杯まで」と決めておきます。飲み始めてから決めるのは、まず無理です。
  4. 度数の高いものを避け、割って飲む ― ストロング系の缶チューハイやショットは少量で純アルコール量が跳ね上がります。薄めのハイボールや水割りなら、同じ杯数でも摂取量は下がります。
  5. 週に2日以上、飲まない日をつくる ― 毎日の少量は、週1回の多量より身体に残りやすいと私は考えています。飲まない日を先にカレンダーに入れてください。
  6. 就寝の3時間前までに飲み終える ― 寝る直前まで飲むと眠りの後半が浅くなります。時間を空けるほど翌朝の身体は軽くなります。
  7. 翌朝は水とたんぱく質から始める ― 起床後にコップ1〜2杯の水と、卵やヨーグルト、プロテインでたんぱく質を補い、前夜に足りなかった材料を取り戻します。

水分補給の考え方は「水分不足はトレーニングの敵 ― 正しい水分補給の基本」で詳しく書いています。飲む日こそ、水の量を意識してください。

おつまみの選び方 ― 太らず、筋肉を守る

お酒そのものより、一緒に食べるものの方が体重に影響することは珍しくありません。アルコールが入ると、身体はアルコールの分解を優先し、食べたものの脂肪が使われにくくなります。つまり、飲んでいるときに食べた揚げ物や締めのラーメンは、普段より脂肪として残りやすいということです。

選びたいおつまみ控えたいおつまみ
刺身、焼き魚、焼き鳥(塩)、ささみ唐揚げ、フライドポテト、天ぷら
枝豆、冷奴、だし巻き卵、納豆ピザ、チーズたっぷりの料理、マヨネーズ系
サラダ、野菜スティック、海藻、きのこ締めのラーメン、お茶漬け、菓子パン
塩分控えめのナッツ(少量)スナック菓子、甘いデザート

考え方は外食でメニューを選ぶときと同じで、「たんぱく質の主役を先に決める」「揚げ物と重いソースを外す」の2つです。詳しくは「外食が多くても痩せられる ― 太らないメニューの選び方」を参考にしてください。

「締め」の炭水化物を欲しくなるのは、アルコールで血糖の調整が乱れるためで、意志の弱さではありません。席で先に枝豆や冷奴、刺身をしっかり食べておき、締めに手が伸びない状態をつくるのが現実的な対策です。

減量期・大会前・増量期での考え方

お酒との付き合い方は、いまどの時期にいるかでも変わります。私が指導で分けている3つの時期の考え方です。

減量期:飲むなら「週1回・20gまで」と決める

減量中は摂取カロリーを絞っている分、アルコールのカロリーと食欲への影響が響きます。純アルコール1gは約7kcalで、20gなら約140kcal。おつまみを含めると、ビール1本の席で300〜400kcalに簡単に届きます。減量中に飲むなら週1回・20gまでと決め、その日の食事全体で帳尻を合わせてください。「やめられないから減量を諦める」よりは、ルールを決めて飲む方がずっと良い結果になります。

大会前:数週間は完全に外す

私自身、大会前の数週間はお酒を完全に外します。減量の最終段階では、水分の出入り、睡眠、食欲のコントロールが仕上がりを左右するため、アルコールが入る余地がありません。競技を目指す方には、大会の4〜8週間前からはゼロにすることをお勧めしています。

増量期:飲んでいいわけではない

「増量期だからカロリーは多い方がいい」とお酒を自由にする方がいますが、誤解です。アルコールのカロリーは筋肉の材料にならず、脂肪として残りやすいうえ、筋肉の合成そのものを妨げます。増量期こそたんぱく質と炭水化物で増やし、アルコールは減量期と同じ目安で付き合ってください。

いずれの時期でも、お酒の影響を最小限にする最大の味方は睡眠です。「筋肉は寝ている間につくられる ― 睡眠の質を上げる7つの習慣」も、あわせて読んでいただければと思います。

私が現場で見てきたNG例

  • ジム帰りに「ご褒美の一杯」 ― もっとも修復が活発な時間帯にアルコールを入れる、いちばん効果が目減りする飲み方です。
  • ストロング系を「1本だけ」 ― 9%の350ml缶1本で純アルコール約25g。ビール1本より多い、という認識がない方が多いです。
  • 飲んだ翌日に「取り返そう」と高重量 ― 脱水と寝不足の状態で限界に挑むと、フォームが崩れてケガにつながります。
  • 毎晩の「少しだけ」 ― 1日1本でも毎日なら、飲まない日がゼロになります。まず週の中に休肝日をつくることからです。

よくある質問

Q. 筋トレ後にお酒を飲むと、筋肉は落ちますか?

1回飲んだだけで筋肉が落ちることはありませんが、トレーニング直後の飲酒は、その日のトレーニングの効果を目減りさせると考えておいた方が安全です。運動後は筋肉の修復が活発になる時間帯ですが、アルコールはその修復を妨げる方向に働くと報告されています。飲む予定がある日は、トレーニングとの間隔をできるだけ空け、先にたんぱく質を含む食事を済ませてから飲み始めてください。毎回の習慣にしなければ、大きな問題にはなりにくいです。

Q. 筋トレをしている人は、お酒をどれくらいまでなら飲んでいいですか?

私が指導で目安にしているのは、飲む日は純アルコール20g前後まで、週に2日以上は飲まない日をつくる、という2点です。純アルコール20gは、5%のビールなら500ml、日本酒なら1合弱に相当します。厚生労働省の資料でも、生活習慣病のリスクを高める飲酒量として男性で1日40g以上、女性で20g以上が示されています。体格や体質、飲む頻度で影響は大きく変わるため、あくまで上限の目安として、体調や翌日のトレーニングの質を見ながら調整してください。

Q. お酒を飲んだ翌日は筋トレをしてもいいですか?

体調に問題がなければ行って構いませんが、内容は調整をお勧めします。飲酒の翌日は水分が不足しやすく、睡眠の質も落ちているため、集中力と筋力が普段より低下していることが多いです。高重量のスクワットやデッドリフト、限界に挑戦するセットは避け、中程度の重量でフォームを丁寧に確認する日にしてください。起床後にコップ1〜2杯の水と、たんぱく質を含む朝食をとってから向かうと、身体が動きやすくなります。頭痛や吐き気がある日は休養日にしてください。

まとめ ― 「飲むか飲まないか」ではなく「どう飲むか」

  • お酒の影響は、筋肉の修復の妨げ・ホルモンの乱れ・睡眠の質の低下・水分と栄養の損失の4つ
  • 量は純アルコール量で考える。飲む日は20g前後まで、週2日以上は飲まない日をつくる
  • トレーニング直後は飲まない。飲む日は休養日に当て、翌日は高重量を避ける
  • 飲む前にたんぱく質、お酒と水を交互に、本数は席に着く前に決める、就寝3時間前まで
  • おつまみは刺身・焼き鳥・枝豆・冷奴。揚げ物と締めの炭水化物は外す
  • 減量期は週1回・20gまで。大会前はゼロ。増量期も自由ではない

今日できる一歩は、次に飲む日を決めて、その日を休養日にすることです。席に着く前に「今日は何をどれだけ飲むか」を自分に宣言してください。設計して飲めば、お酒と身体づくりは十分に両立します。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。持病やケガのある方は、医師や専門家に相談のうえでトレーニングを行ってください。
井坂貴大
井坂 貴大(いさか たかひろ) INBA/PNBA 日本国内初プロカード。日本人初・2年連続で世界大会「Natural Olympia」出場。Tokyo Nanobody Lab(六本木)/プロフィットジム(つくば)オーナー。プロフィール詳細 →
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