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ミールプレップ入門 ― 週末2時間で平日の筋トレ飯を整える

「平日は忙しくて、食事がどうしても適当になってしまう」「トレーニングは頑張れるのに、食事で崩れる」。セッションで食事の記録を見せてもらうと、月曜と火曜はきれいに整っているのに、水曜あたりから昼食がパン1個、夕食がコンビニ弁当に変わっていく方がとても多いです。本人は「意志が弱いから」と言いますが、私はそう思いません。

平日の食事が崩れる原因は、意志ではなく準備の有無です。夜遅く帰ってきて、疲れた頭で「何を食べるか」を考え、そこから買い物と調理をするのは、誰にとっても無理があります。年間1,500本のセッションで多くの方の食事を見てきましたが、身体が変わる方に共通しているのは、料理が上手なことではなく「食べるものが先に決まっていて、手元にある」ことです。

この記事では、週末に2時間だけ使って平日5日分の食事を作り置きする「ミールプレップ」の始め方をまとめます。身体づくりに効く理由、2時間で回すための手順、たんぱく質から逆算する献立の型、容器と冷凍・冷蔵の使い分け、そして9月の残暑の時期に欠かせない食中毒対策と、飽きずに続けるコツまで。今週末から始められる形にしました。

ガラス容器3つに玄米・コーン・きゅうり・トマト・レンズ豆を詰めた作り置きの弁当

ミールプレップとは ― 「作り置き」が身体づくりに効く理由

ミールプレップ(meal prep)は、食事をあらかじめまとめて準備しておくことです。日本語でいえば「作り置き」ですが、身体づくりの文脈では「たんぱく質・炭水化物・野菜を決めた量で容器に詰めておく」ところまで含めて使われます。写真で見るような、透明な容器がずらりと並ぶあの光景です。

理由1:迷う回数が減る

食事の管理でいちばん消耗するのは、調理ではなく「決めること」です。1日3食、平日5日で15回。毎回「何を食べるか」を考えていると、疲れた日ほど楽なほうへ流れます。作り置きがあれば、決める回数が週に1回になります。決めるのは週末の元気なときに、食べるのは平日の疲れたときに。この分業が最大の効果です。

理由2:量が毎回同じになる

減量でも増量でも、結果を左右するのは「だいたい同じ量を毎日食べられているか」です。外食では同じメニューでも量がまちまちですが、自分で詰めた容器なら、鶏むね肉150g、ごはん200gと量が固定されます。体重の変化を見て調整するときも、「先週より20g減らす」という判断が正確にできます。

理由3:食費と時間が減る

まとめ買い・まとめ調理は、1食ずつ買って作るより明らかに安く、片づけも1回で済みます。平日の夜に調理と洗い物で30分使っていた方が、その30分をストレッチや睡眠に回せる。この差が積み重なると、身体の変わり方が変わってきます。

週末2時間で5日分を作る ― 私が勧めている手順

「作り置き」と聞くと、何品も作る手の込んだ料理を想像する方がいますが、身体づくりのミールプレップはむしろ逆です。品数は少なく、量は多く。私が指導で勧めている2時間の流れを、時間の目安とともに書きます。

時間やることポイント
0〜10分献立と分量を決め、容器を並べる紙に「たんぱく質・炭水化物・野菜」の3行を書き、それぞれ1〜2種類に絞る
10〜25分炊飯器でごはんを炊き始める(3〜4合)炊いている間に他の作業。玄米や雑穀を混ぜる場合はここで
25〜60分たんぱく質をまとめて加熱する鶏むね肉はオーブンか炊飯器の保温、フライパンでは一度に焼ける量を守る
60〜85分野菜を加熱するブロッコリー・冷凍ほうれん草・きのこはレンジか蒸し。生野菜は当日に足す
85〜105分容器に詰めるはかりを使って1食分ずつ。粗熱を取ってからふたをする
105〜120分冷蔵・冷凍に振り分けて片づけ月〜水は冷蔵、木〜金は冷凍。翌週のために足りない材料をメモ

調理は「並行」で考える

2時間で終わる人と4時間かかる人の差は、料理の腕ではなく段取りです。炊飯器・オーブン(または魚焼きグリル)・コンロ・電子レンジの4つを同時に動かすと、待ち時間がほとんどなくなります。鶏むね肉をオーブンに入れたら、その間に野菜を切ってレンジにかけ、フライパンで卵を焼く。最初の1〜2回は手順を紙に書いて、キッチンに貼っておくことをお勧めしています。

最初は「昼食5日分だけ」でいい

いきなり平日の3食すべてを作り置きしようとすると、量が多くて挫折します。私が最初に勧めるのは、平日の昼食5食分だけです。昼食は外食やコンビニになりやすく、崩れやすい食事です。ここが整うだけで、1週間のたんぱく質量が大きく変わります。慣れてきたら夕食を足し、それでも足りなければ朝食の卵や納豆を準備する、という順番で広げてください。

たんぱく質から逆算する献立の型

献立に迷ったときは、「何を作ろう」ではなく「たんぱく質をいくら入れるか」から考えます。1食のたんぱく質は25〜35gが目安で、1日の必要量はたんぱく質は1日どれくらい必要かの記事で詳しく書いています。作り置きの献立は、次の3行を埋めるだけです。

  1. たんぱく質:鶏むね肉・鶏もも肉・豚ヒレ・赤身牛肉・鮭・卵・豆腐から1〜2種類
  2. 炭水化物:白米・玄米・雑穀米・さつまいも・オートミールから1種類
  3. 野菜:ブロッコリー・ほうれん草・きのこ・にんじん・パプリカから2〜3種類
1食分の例たんぱく質源炭水化物野菜たんぱく質の目安
減量期の昼食鶏むね肉 150gごはん 150gブロッコリー・きのこ約35g
増量期の昼食鶏もも肉 150g+ゆで卵1個ごはん 250gほうれん草・にんじん約35g
魚を入れる日焼き鮭 1切れ+豆腐 150g玄米 200gブロッコリー・パプリカ約30g
忙しい週の最低限サラダチキン 1パック+ゆで卵1個冷凍ごはん 200g冷凍ほうれん草約30g

たんぱく質の数値は、鶏むね肉100gで約23g、卵1個で約6g、鮭1切れで約18g、豆腐150gで約10gという、よく知られた目安から計算しています。製品や部位で差があるので、あくまで概算として使ってください。

減量期と増量期で変えるのは「炭水化物の量」だけ

減量期と増量期で献立を丸ごと変える必要はありません。たんぱく質源と野菜は同じにして、ごはんの量だけを変えるのが、いちばん続けやすい方法です。減量期は150g、増量期は250gというように、詰めるときのはかりの数字を変えるだけで対応できます。減量期の考え方は減量中のPFCバランスの記事にまとめています。

私自身の作り置き

私自身も、セッションが続く週は鶏むね肉とごはんとブロッコリーを中心に作り置きしています。大会前の減量期は毎食の量を細かく管理する必要があるので、作り置きの容器に詰めた時点で1日の食事がほぼ確定します。増量期はごはんを多めに詰め、味付けを変えて飽きないようにする。特別なことは何もしていません。

容器・冷凍・冷蔵 ― 道具と保存の使い分け

ミールプレップを続けられるかどうかは、道具の選び方でかなり決まります。高価なものは必要ありませんが、「同じ形の容器を5〜10個そろえる」ことは強く勧めています。

容器は「同じ形・電子レンジ対応・ふたが密閉」

  • 同じ形:冷蔵庫の中で重ねられ、詰める量も揃う。バラバラの容器は場所を取り、片づけが面倒になる
  • 電子レンジ対応:職場でそのまま温められる。ガラス製は匂いや色が移りにくく、プラスチック製は軽くて持ち運びやすい
  • ふたが密閉できる:かばんの中で汁が漏れないこと。通勤で持ち歩くなら必須
  • 容量は700〜1,000ml:ごはん200gとおかずが入る大きさ。小さいと詰められず、大きいと持ち運びに困る

冷蔵は3日、それ以上は冷凍

私が指導で勧めている目安は、冷蔵で3日以内、それより先の分は冷凍です。日曜に作ったら、月・火・水の分は冷蔵、木・金の分は冷凍にして、水曜の夜に冷蔵庫へ移して自然解凍する。この分け方なら味も食感も大きくは落ちません。ごはんは炊きたてを熱いうちに1食分ずつラップで包んで冷凍すると、解凍後もおいしく食べられます。

冷凍に向くもの・向かないもの

冷凍に向く冷凍で食感が変わりやすい
ごはん、加熱した鶏肉・豚肉・牛肉、焼き鮭きゅうり・トマト・レタスなどの生野菜
ゆでたブロッコリー、ほうれん草、きのこ、にんじん豆腐(食感が大きく変わる)、ゆで卵
下味をつけた生肉(袋のまま冷凍)じゃがいも(マッシュにすれば可)

生野菜やゆで卵は、当日の朝に容器へ足すのが正解です。「作り置きは加熱したもの、当日に足すのは生のもの」と覚えておくと、迷いません。

9月の作り置きで気をつけたい食中毒対策

この記事が公開される9月中旬は、暦の上では秋でも、日中はまだ30度近い日が続く時期です。夏の間に緩んでいた注意が続いているうえに、「涼しくなったから大丈夫」と油断しやすい。作り置きを勧める立場として、ここは省けません。

厚生労働省が食中毒予防の原則として示している「つけない・増やさない・やっつける」の3つを、作り置きに当てはめると次のようになります(詳しくは厚生労働省の食中毒のページを参照してください)。

  • つけない:調理前と生肉を触ったあとは手を洗う。生肉を切ったまな板と包丁で野菜を切らない。容器は乾いた清潔なものを使う
  • 増やさない:加熱後は粗熱を取ったらすぐに冷蔵庫へ。室温に2時間以上置かない。持ち歩くときは保冷剤と保冷バッグを使い、職場に着いたら冷蔵庫に入れる
  • やっつける:鶏肉や豚肉は中心までしっかり加熱する。食べる前の再加熱も、中心が熱くなるまで行う

残暑の時期に私が伝えている追加の注意

  • 冷蔵は「3日以内」を「2日以内」に縮める週があってもいい。とくに気温が高い日が続くときは、木曜以降を必ず冷凍にする
  • ごはんは炊飯器の保温で長時間置かず、炊けたらすぐ小分けにして冷ます
  • 汁気の多いおかずは傷みやすいので、この時期は「焼く・蒸す」を中心にして、煮物は避ける
  • 見た目や匂いに少しでも違和感があれば、もったいなくても食べない。トレーニングを1日休むより、体調を崩して1週間休むほうが損失が大きい

続かない原因と、現場で見てきたNG例

ミールプレップは効果が大きい一方で、始めた方の半分近くが1か月以内にやめてしまう、という印象があります。理由はだいたい同じで、次のどれかです。

  • 最初から凝りすぎた ― 5品作ろうとして4時間かかり、翌週は「もう無理」になった。品数は2〜3品で十分
  • 毎日同じ味で飽きた ― 材料は同じでいいので、味付けだけを日替わりにする。塩こしょう・カレー粉・焼肉のたれ・ポン酢・キムチ・レモンの6種類あれば1週間は回る
  • 完璧を目指して逃げ道をなくした ― 平日のうち1〜2食は外食やコンビニでいい。コンビニ筋トレ飯の選び方を知っておけば、作り置きが切れた日も崩れない
  • 容器がバラバラで片づけが嫌になった ― 同じ容器をそろえるだけで、詰める・洗う・しまうが楽になる
  • 週末に時間を確保しなかった ― 「日曜の午前」のように、トレーニングと同じで予定に入れる。空いたらやる、では続かない

私が現場で見てきたNG例も挙げておきます。

  • 減量を急いで鶏むね肉とブロッコリーだけを5日分作り、3日目に耐えられなくなって反動で食べすぎた
  • 大きな保存袋に5日分の鶏肉をまとめて入れ、毎回袋を開け閉めしているうちに傷ませてしまった
  • 冷凍した容器を朝そのままかばんに入れ、昼に解凍しきれず冷たいまま食べて、結局作り置きをやめた

どれも、やり方を少し変えれば防げるものです。うまくいっている方は、「品数を絞る」「1食ずつ分ける」「前日の夜に冷蔵庫へ移す」という小さな工夫を、最初の2週間で身につけています。

よくある質問

Q. 作り置きの筋トレ飯は何日もちますか?

私が指導で勧めている目安は、冷蔵で3日以内、それより先の分は冷凍です。月曜から水曜の分は冷蔵、木曜と金曜の分は冷凍して前日の夜に冷蔵庫へ移す、という分け方が続けやすいです。9月はまだ気温が高く、傷みやすい時期なので、加熱後は粗熱を取ってすぐ冷蔵庫に入れ、見た目や匂いに少しでも違和感があれば無理に食べないでください。

Q. ミールプレップで飽きないためにはどうすればいいですか?

全部を変えようとせず、味付けだけを変えるのがコツです。鶏むね肉やごはんといった土台は同じでも、塩こしょう・カレー粉・焼肉のたれ・ポン酢・キムチのように仕上げの調味料を日替わりにすると、同じ材料でも別の食事に感じられます。もう一つは、5日分すべてを作らず、平日のうち1〜2食は外食やコンビニに逃げ道を残しておくことです。飽きる前に休む仕組みを作っておくと、結果として長く続きます。

Q. 冷凍したごはんや鶏肉は栄養が落ちませんか?

家庭での冷凍で、たんぱく質や炭水化物の量が身体づくりに影響するほど減ることは、一般的には考えにくいです。ごはんは炊きたてを熱いうちに小分けして冷凍すると、解凍後の食感も保ちやすくなります。鶏肉は加熱してから冷凍しても、生のまま下味をつけて冷凍してもどちらでも構いません。野菜は冷凍で食感が変わるものが多いので、作り置きは加熱野菜にして、生野菜は当日に足すのが私の勧め方です。

まとめ ― 食事は「意志」ではなく「準備」で決まる

  • 平日の食事が崩れる原因は意志の弱さではなく準備不足。決めるのは週末、食べるのは平日、と分業する
  • 週末2時間で回すコツは品数を絞り、炊飯器・オーブン・コンロ・レンジを並行して動かすこと。最初は昼食5日分だけでいい
  • 献立は「たんぱく質・炭水化物・野菜」の3行を埋めるだけ。1食のたんぱく質は25〜35gを目安に、減量期と増量期はごはんの量だけを変える
  • 容器は同じ形・電子レンジ対応・密閉できるものを5〜10個。冷蔵は3日以内、それ以降は冷凍。生野菜とゆで卵は当日に足す
  • 9月はまだ気温が高い。「つけない・増やさない・やっつける」を守り、粗熱を取ったらすぐ冷蔵、持ち歩きは保冷剤つきで
  • 続かない原因は凝りすぎ・同じ味・逃げ道なし。味付けを日替わりにし、週に1〜2食は外食やコンビニでいいと決めておく

今週末にできる一歩は、同じ形の容器を5個買って、鶏むね肉1kgとごはん3合とブロッコリー1株で、平日の昼食5日分だけを作ってみることです。2時間もかからないはずです。そして金曜日に、今週の昼食がどれだけ楽だったかを振り返ってください。「決めなくていい」ことの軽さを一度味わうと、身体づくりの食事は驚くほど続くようになります。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。持病やケガのある方は、医師や専門家に相談のうえでトレーニングを行ってください。
井坂貴大
井坂 貴大(いさか たかひろ) INBA/PNBA 日本国内初プロカード。日本人初・2年連続で世界大会「Natural Olympia」出場。Tokyo Nanobody Lab(六本木)/プロフィットジム(つくば)オーナー。プロフィール詳細 →
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