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筋トレとビタミン・ミネラル ― 亜鉛・マグネシウムの目安と摂り方

「たんぱく質は体重×2g摂っている。炭水化物も計算している。それでも疲れが抜けない、記録が伸びない、夜中に脚がつる」。こうした相談を受けたとき、私が確認するのは食事の「量」ではなく「中身の幅」です。鶏むね肉と白米とブロッコリーだけの食事は、たんぱく質と糖質は足りていても、それを身体で使うための栄養が足りていないことがあります。

年間1,500本のパーソナルセッションを担当するなかで、食事を設計している方ほど、ビタミンとミネラルが「見落とし」になりやすいと感じています。結論から言うと、ビタミン・ミネラルは筋肉を直接増やす栄養ではありませんが、不足すると、食べたたんぱく質と糖質を活かせず、回復と体調の土台が崩れます。

この記事では、筋トレをする人が微量栄養素を不足させやすい理由、特に意識したい5つの栄養素の目安量と食材、秋の食卓での揃え方、サプリメントの使い方と上限、現場でよく見るNG例をまとめます。鮭やさんま、きのこが旬を迎え、牡蠣が出回り始める10月下旬は、食事で揃えやすい時期です。

木の皿に盛られたグリルチキンと、パプリカ・にんじん・いんげん・ズッキーニのグリル野菜、輪切りのレモンとローズマリー

筋トレする人ほどビタミン・ミネラルが不足しやすい理由

「しっかり食べているから足りているはず」と思われがちですが、トレーニングをする人には特有の不足の要因があります。

  • 汗で失われる ― 汗にはナトリウムのほか、マグネシウム、亜鉛、鉄がわずかに含まれます。週4〜5回しっかり汗をかく習慣では積み重なります
  • 減量期に食事の総量が減る ― 微量栄養素は食事量にほぼ比例して入ってくるため、摂取カロリーを3割落とせば、何も意識しなければ微量栄養素もおよそ3割減ります
  • 献立が単調になる ― 鶏むね肉・白米・卵・プロテインの繰り返しは管理しやすい反面、食材の種類が少ないほど特定の栄養素が抜けます
  • 加工食品とプロテインバーで「カロリーだけ」埋まる ― 増量期にありがちで、エネルギーは足りても微量栄養素は空っぽになります

いずれも「食べていない」のではなく、「食べ方の偏り」で起きる不足です。だからこそ本人は気づきにくく、疲労や伸び悩みの原因として見過ごされます。

筋トレする人が特に意識したい5つの栄養素と1日の目安

ビタミン・ミネラルは「微量栄養素」と呼ばれ、必要量はごく少量ですが、たんぱく質を筋肉に変える、糖質をエネルギーに変えるといった反応のほとんどに「補酵素」や「材料」として関わっています。私が指導で優先して確認しているのは次の5つです。目安量は厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」の成人の値を参考に、18〜64歳のおおよその値で示します。不足のサインは目安で、続く場合は自己判断でサプリメントを増やさず、医療機関で血液検査を受けてください。

① 亜鉛 ― たんぱく質を筋肉に変える反応に関わる

亜鉛は、たんぱく質の合成やホルモンの働き、免疫に関わるミネラルです。推奨量の目安は男性で1日11mg、女性で8mg。汗からも失われ、減量期で肉や魚が減ると不足しやすくなります。食品では牡蠣が群を抜いており、生牡蠣100g(むき身4〜5個)でおよそ14mg。牛もも赤身肉100gで4〜5mg、豚レバー100gで約7mg、納豆1パックで約1mgが目安です。味覚の鈍りや肌荒れが不足のサインです。

② マグネシウム ― 筋肉の収縮と弛緩に関わる

マグネシウムは、筋肉の収縮と弛緩、エネルギー代謝、骨の形成など、体内の300種類以上の酵素反応に関わるといわれるミネラルです。推奨量の目安は男性で1日340〜370mg、女性で270〜290mg。トレーニング後の脚のつりやまぶたのけいれんは、不足のサインとして現場でよく話題になります。食品では、アーモンド25g(約20粒)で約70mg、納豆1パックで約50mg、玄米1膳(150g)で約70mgが目安で、海藻、豆腐、ほうれん草、バナナにも含まれます。

③ ビタミンD ― 骨と筋機能。秋冬に不足しやすい

ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨と筋肉の機能に関わります。日光を浴びることで皮膚でもつくられるため、日が短くなり屋内で過ごす時間が増える秋から冬は、1年で最も不足しやすい時期です。目安量は成人で1日8.5〜9μg(食事摂取基準の版によって異なります)。食品では魚が圧倒的で、鮭1切れ(80g)で約25μg、さんま1尾(可食部100g)で約15μg。まいたけや干ししいたけ、卵黄にも含まれます。週2〜3回魚を食べていれば、食事だけでも届く量です。魚の脂質についてはオメガ3と筋トレ ― 魚とフィッシュオイルの効果と摂り方で詳しく書いています。

④ 鉄 ― 酸素を運ぶ力。女性と減量期は特に注意

鉄は、血液中で酸素を運ぶヘモグロビンの材料です。不足すると持久力が落ち、同じ重量でも息が上がりやすくなります。推奨量の目安は男性で1日7.5mg、月経のある女性で10.5mg前後。「最近すぐ息が切れる」「立ちくらみがする」という女性の相談で、まず疑うのは鉄です。肉や魚の「ヘム鉄」は吸収率が高く、野菜や豆の「非ヘム鉄」はビタミンCと一緒に摂ると吸収が高まります。牛もも赤身肉100gで約2.5mg、かつお100gで約2mg、あさりのむき身50gで約2mgが目安です。鉄のサプリメントは過剰になると胃腸の不調や蓄積につながることがあるため、血液検査で不足が確認されてから、医師と相談して使うのが原則です。

⑤ ビタミンB群 ― 食べたものをエネルギーに変える

ビタミンB群(B1、B6、B12など)は、糖質・脂質・たんぱく質をエネルギーや身体の材料に変える反応を助けます。特にB1は糖質、B6はたんぱく質の代謝に関わり、炭水化物やたんぱく質を多く摂る人ほど必要量が増えると考えられています。推奨量の目安はB1・B6とも男性1.4mg・女性1.1mg。B1は豚肉(豚ヒレ肉100gで約1.3mg)、B6はかつお・まぐろ・鶏むね肉・バナナ、B12は魚介やレバー、卵に多く含まれます。水に溶けやすく体内にためておけないため、「毎日少しずつ」が基本です。

秋の食卓でそろえる ― 1日のモデル献立

数字を覚える必要はありません。食材の「種類」を増やせば、微量栄養素は自然に揃います。10月下旬のこの時期にお客様へ提案している、1日の献立例です。たんぱく質は体重70kgの方で1日140g前後を想定しています。

食事献立例主に補える栄養素
朝もち麦入り納豆ごはん、卵焼き、きのこと小松菜の味噌汁、みかん1個マグネシウム、鉄、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD(きのこ)
昼鶏むね肉のソテー、玄米、ブロッコリーとパプリカ、無糖ヨーグルトビタミンB6、ビタミンC、マグネシウム、カルシウム
間食アーモンド20粒、バナナ1本、プロテインマグネシウム、ビタミンB6、カリウム
夜鮭の塩焼き、牛赤身肉とほうれん草の炒めもの、まいたけと豆腐の汁物、柿ビタミンD、亜鉛、鉄、マグネシウム、ビタミンC

ポイントは、魚を週2〜3回、赤身肉を週1〜2回、納豆または豆腐を毎日、きのこと海藻を汁物で毎日、果物を1日1〜2個。この5つを守るだけで、サプリメントに頼らなくても5つの栄養素はほぼ埋まります。11月から旬を迎える牡蠣を月に2〜3回食べれば、亜鉛はそれだけでかなり補えます。秋は鮭、さんま、きのこ、さつまいも、ほうれん草、柿と、微量栄養素の多い食材が最も手に入りやすい季節です。「色の違う食材を1食に3色以上」と意識するだけで、献立の偏りはかなり減ります。

サプリメントはどう使うか ― 優先順位と「上限」の考え方

基本は食事です。ただ、減量期で食事量が減っている、魚を食べる習慣がない、血液検査で不足が出た、といった場合はサプリメントが助けになります。優先順位は「食事の穴が明確なものから」です。プロテインやクレアチンも含めた全体の順番はサプリの優先順位 ― 筋トレに本当に必要なものはどれかにまとめています。

サプリメント検討する状況注意点
ビタミンD魚を週2回以上食べない、冬場、屋内中心の生活脂溶性で蓄積するため、成人の耐容上限(1日100μg)を超えない。25〜50μg(1,000〜2,000IU)程度の製品が一般的
マグネシウム脚がつりやすい、ナッツ・豆・海藻をほとんど食べないサプリからは1日350mgを超えないのが目安。多く摂ると下痢を起こしやすい
亜鉛減量期で肉・魚が減っている、味覚の変化がある耐容上限は男性40〜45mg、女性35mg。長期の過剰摂取は銅の吸収を妨げる。1日10〜15mgの製品で十分
鉄血液検査で不足が確認された場合のみ自己判断で始めない。過剰は胃腸の不調や蓄積のリスク
マルチビタミン・ミネラル食事が単調な時期の「保険」として不足分を埋める補助。飲んでいれば食事を気にしなくてよい、ではない

上限を書いたのは、「多ければ多いほどよい」と思っている方が意外に多いからです。ミネラルは互いに吸収を競合し、亜鉛を大量に摂ると銅や鉄の吸収が落ちるといった影響も知られています。プロテインや栄養強化食品にも添加されていることがあり、重ねると知らないうちに上限に近づきます。表示を一度、足し算してみてください。

私の実践と、現場でよく見るNG例

私自身は、11月12日のNatural Olympiaに向けた減量の最終段階に入っており、食事の総量は増量期より大きく減っています。この時期に意識しているのは「量を減らしても種類を減らさない」ことです。魚は週3回以上、納豆ときのこの味噌汁は毎日固定、間食はアーモンド。減量期はビタミンDとマグネシウムだけをサプリメントで補い、それ以外は食事で揃えています。

お客様には、サプリメントを勧める前に、まず1週間の食事を書き出してもらいます。魚が0回、野菜はレタスとブロッコリーだけ、果物なし、という方は珍しくありません。その場合、サプリより先に「魚を週2回、納豆を毎日、果物を1日1個」を足してもらいます。これだけで疲れの抜け方が変わったと言われる方が多いです。

現場でよく見るNG例

  • 鶏むね肉・白米・ブロッコリーだけを毎日繰り返す ― たんぱく質は十分でも、亜鉛・鉄・マグネシウム・ビタミンDが慢性的に足りない
  • 減量期に「量を減らす」だけで「種類」を考えない ― 食事量に比例して微量栄養素も減る。減量期こそ食材の数を増やす
  • 脚がつるからとマグネシウムのサプリを1日600mg摂る ― サプリからの目安は350mgまで。下痢で水分と電解質をさらに失う
  • 疲れやすいからと自己判断で鉄サプリを飲み始める ― 不足か過剰かは血液検査でしか分からない
  • 果物を「糖質だから」と完全に抜く ― ビタミンCとカリウムの供給源が消える。減量中でも1日1個は残す

体調不良の原因は栄養不足だけではなく、睡眠不足やオーバートレーニングでも同じ症状が出ます。汗で失う水分と電解質の考え方は筋トレ中の水分補給と電解質にまとめています。

よくある質問

Q. 筋トレをする人はビタミン・ミネラルを多めに摂る必要がありますか?

一般の方より必要量がやや多くなる可能性は指摘されていますが、「推奨量の2倍摂れば効果が2倍」にはなりません。汗で失われる分、減量期に食事量が減る分を、食材の種類を増やして補うのが基本です。魚を週2〜3回、赤身肉を週1〜2回、納豆や豆腐を毎日、きのこと海藻を汁物で、果物を1日1〜2個。この5つを守れば、サプリメントなしでも推奨量にはおおむね届きます。

Q. 亜鉛とマグネシウムは筋肉にどんな効果がありますか?

亜鉛はたんぱく質の合成やホルモンの働き、免疫に関わり、マグネシウムは筋肉の収縮と弛緩、エネルギー代謝に関わります。どちらも不足すると、食べたたんぱく質を活かしにくくなり、回復の遅れや脚のつり、疲れやすさとして現れることがあります。ただし、足りている人がさらに摂っても筋肉が増えるわけではありません。1日の推奨量の目安は、亜鉛が男性11mg・女性8mg、マグネシウムが男性340〜370mg・女性270〜290mgです。牡蠣・赤身肉・納豆・アーモンド・海藻を食卓に増やすことから始めてください。

Q. マルチビタミンのサプリは筋トレに必要ですか?

食事が整っていれば必須ではありません。減量期で食事量が大きく減っている時期や、出張続きで献立が単調になる時期の「保険」として使うのは合理的ですが、飲んでいれば食事を気にしなくてよい、という考え方は逆です。使う場合は、プロテインや栄養強化食品に添加されている分と合計して、亜鉛やビタミンDが耐容上限に近づいていないかを確認してください。鉄入りの製品は、血液検査で不足が分かっている方以外は避けるのが無難です。

まとめ ― 微量栄養素は「量」より「種類」で揃える

  • ビタミン・ミネラルは筋肉を直接増やす栄養ではないが、不足するとたんぱく質と糖質を活かせない
  • 筋トレする人は、汗・減量・単調な献立・加工食品で不足しやすい
  • 優先して意識するのは亜鉛・マグネシウム・ビタミンD・鉄・ビタミンB群の5つ
  • 魚を週2〜3回、赤身肉を週1〜2回、納豆や豆腐を毎日、きのこと海藻を汁物で、果物を1日1〜2個
  • サプリは食事の穴が明確なものから。耐容上限と重複に注意し、鉄は血液検査が先

今日の行動の一歩は、この1週間で「魚を何回食べたか」「果物を何個食べたか」を数えることです。魚が2回未満、果物が週3個未満なら、サプリメントを買う前に、今夜の献立に鮭を1切れ、明日の朝にみかんを1個足してください。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。持病やケガのある方は、医師や専門家に相談のうえでトレーニングを行ってください。
井坂貴大
井坂 貴大(いさか たかひろ) INBA/PNBA 日本国内初プロカード。日本人初・2年連続で世界大会「Natural Olympia」出場。Tokyo Nanobody Lab(六本木)/プロフィットジム(つくば)オーナー。プロフィール詳細 →
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